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自然災害が発生したとき人工物が自然のエネルギーに耐え切れず大きな災害となることがあります。2011年 3月11日に発生した東日本大震災による災害もそれです。英知を結集して設計製作していたはずの原子力発電所が一瞬にして破壊されてしまいました。想定外の規模であったということだけで片付けられるでしょうか。
第1回 設計の役割において源流管理の重要性を紹介しました。設計が広辞苑でいう「@ある目的を具体化する作業。製作・工事などに当たり、工費・敷地・材料及び構造上の諸点などの計画を立て、図面その他の方式で明示すること。A比喩的に、人生や生活において計画を立てること。」であるならば、可能な限り上流の計画段階で品質や安全を作り込まなければならないということです。
そのための方法論が各分野の研究者たちによって開発されていますが、「もの」を具体化するための「考えるプロセスである設計」をおろそかにしてはならない点で一致しています。そして、設計者は自分が設計製作した「もの」が、社会に役立つ反面、人を傷つけることがあるということも認識しておかなければなりません。設計者は、自分が設計した「もの」を使う人の立場や状況にまで思いを馳せなければなりません。
安全の分野では厚生労働省から「機械の包括的な安全基準に関する指針」が公表されています。その中で、機械の安全化のために機械のメーカー、ユーザーそれぞれが実施すべき事項が定められています。機械の安全化は事故や品質トラブルの未然防止に繋がる重要なポイントなのです。
表1は機械の安全化の流れを示したものです。この中で、保護方策の実施として本質的安全設計方策が挙げられています。そして、実施の流れは、@本質的安全設計方策の実施、A安全防護及び付加保護方策の実施、B使用上の情報の作成の順番になっています。本質的安全設計とは、設計の段階から「為すべきことを配慮すること」であり、最も本質的な安全の確保の方法を指しています。
これには大きく分けて次のような二つの方法があります。
(1)危険性又は有害性(以下「危険源」という。)を除去する方法
(2)作業者が危険源と接触する機会を低減する方法
労働災害は何らかの不安全状態や不安全行動が原因となり発生することが多いようです。このような不安全行動や不安全状態があっても労働災害を発生させないためには、設備や作業環境などにおける「フールプルーフ化」 や「フェールセーフ化」が必要になります。本質的設計方策にはフールプルーフやフェールセーフによる安全化は欠かせないと考えます。
(参考資料)
国際安全規格であるISO12100には、本質安全設計によるリスクの低減、安全防護によるリスクの低減、 使用上の情報によるリスクの低減 という順番で行うことが明記されています。
JIS B9700( 機械類の安全性-設計のための一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減)は2010年に発行されたISO12100を基に、技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格です。この規格は、機械類の設計において安全性を達成するときに適用される基本用語及び方法論について規定しています。また、設計者がこの目的を達成することを支援するため、リスクアセスメント及びリスク低減の原則も規定しています。
厚生労働省では、安全衛生行政を効果的に推進するため、かねてから労働災害についての分析、検討を行なっています。ここでは少し古いデータですが、平成19年の製造業のデータの内、不安全行動と不安全状態による休業4日以上の死傷災害について紹介します。
平成19年の休業4日以上の死傷者数は36,087人です。
分析結果によれば不安全行動のないもの(1,119人)、不安全行動の分類不能(156人)
不安全状態のないもの(3,222人)、不安全状態の分類不能(129人)となっており、
何らかの不安全行動、不安全状態が原因となった死傷災害の割合はそれぞれ96.5%と90.7%になっています。
主な原因(詳細)は次のとおりです。
●不安全行動の詳細
@誤った動作(11,823人)
Aその他危険場所への接近(8,685人)
Bその他不安全な行為(5,106人)
C運転中の機械、装置等の掃除、注油、修理、点検など(4,521人)
D保護具、服装の欠陥(1,071人)
●不安全状態の詳細
@作業方法の欠陥(12,618人)
A物の置き方、作業場所の欠陥(8,124人)
B防護・安全装置の欠陥(7,020人)
C物自体の欠陥(1,296人)
D保護具、服装等の欠陥(1,233人)
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。(2014.7.27)