技術情報メモ38Technical information
38)材料力学(力学の基礎知識)
「力学」とはどのような学問をいうのでしょうか。世界大百科事典(第2版)には次のように解説されています。
「物体に働く力とそれによって起こる運動もしくはその変化との間の関係を論ずる学問。運動やその変化が生じないような場面、すなわち複数の力の平衡関係を論ずる場合を静力学(statics)、そうでない場合を動力学(dynamics)として区別することもある。また、もっぱら運動の状態を記述することに場面を限定し、運動(とその変化)の原因としての力をもち出さない場合を運動学(kinematics)と呼ぶ。英語において(mechanics)がそうした意味で用いられるようになったのは17世紀で、(dynamics)ははるかに後世(19世紀)の使用である。」
どのような物体でも力を加えられれば少なからず変形します。外力による変形は、次に記載した弾性、塑性及び粘性の三種類に分けられます。
@弾性変形:物体に外力が作用すると同時に外力の方向にその力に応じた量の変形を生じ、外力を除去すると同時に原
形に回復する性質を有しています。なお、 外力が一定であれば、ひずみも一定であり、 外力を除去すると同時にひ
ずみも消失し、永久的な変形が残ることはありません。
A塑性変形:物体に外力が作用すると同時に外力の方向にその力に応じた量の変形を生じ、外力を除去しても原形には
回復しない(永久的な変形が残存)性質を有しています。
B粘性変形:物体に外力が作用すると時間の経過と共に変形し、外力を除去すると原形付近までは回復するが、原形に
は戻らず永久的な変形が残る性質を有しています。
ところで、研究対象、理論などにより、力学の分類は必ずしも一定していないようです。本技術情報メモでは材料力学に関する情報提供なので、変形する物体の視点から、上述の解説などを参考にMechanics(力学)を次のように分類しています。
力学ーーーーーーー変形体の力学ーーーーーーーーーーーーーーーー粘性変形ーーー流体力学
(Mechanics) |(変形する物体(固体,液体,固体)の力学) |−−−弾性変形ーーー材料力学
| |−−−塑性変形ーーー材料力学
|ーーー剛体力学ーーーーーーーーーーー静力学(Statics)
(質点とみなせない物体(剛体)の力学)|−−動力学(Dynamics)−−−−−運動学(Kinematics)
(剛体の運動を扱う力学の一分野) |−−運動力学(Kinetics)
気体や液体は、比較的自由に変形(粘性)します。これらを扱う学問が流体力学です。
固体は、それほど自由には変形しません。固体は弾性変形を起こす弾性体と塑性変形を起こす塑性体に分類されます。
剛体は、質点とみなせない物体(大きさを無視できない)のことで、物体を構成する各々の質点間の相互の位置が変わらない仮想物体のことをいいます。換言すると、剛体とは、いかなる力を受けても変形しない物体のことです。そして、固体は、強い力を加えない限り、剛体として扱うことができます。なお、質点とは、物体の形や大きさを無視して、重心に全質量が集中した点とみなしています。
アイザック・ニュートンは1687年に、3巻からなる著作『自然哲学の数学的諸原理』(略称『プリンキピア』)を発表しました。よく知られているニュートン力学の原型はこの著作を通して公表されました。ニュートン力学は量子力学が出現する前の力学体系であり、古典力学と呼ばれています。
古典力学(広辞苑から引用)
巨視的物体の運動に関する物理法則を中心とする理論体系。ガリレイに始まり、ニュートンが力及び質量の力学的
概念を導入することによって確立した。静力学・動力学・質点力学・剛体力学、あるいは対象により流体力学・弾
性体力学・天体力学など。
参考:量子力学(広辞苑から引用)
分子・原子・原子核・素粒子などの微視的物理系を支配する物理法則を中心とした理論体系。1920年代に完成。
物理系の状態には線形空間内のベクトルを対応させ、物理量にはその上の演算子を対応させるという抽象的構造を
もつ。不確定性原理を基本とし、観測値の予言は一般に確率的に与えられるが、状態の時間的変化を記述するシュ
レディンガー方程式は因果的である。
ここでは、アイザック・ニュートンが提唱した質点の運動に関する法則を、以下のとおり、紹介します。
これらの法則は、質点とはみなせない物体(剛体、流体、弾性体など)に対しても基礎となる考え方です。
第1法則(慣性の法則) 質点は、力が作用しない限り、静止または等速直線運動を続ける。
第2法則(ニュートンの運動方程式) 質点の加速度aは、そのとき質点に作用する力Fに比例し、質点の質量mに
反比例する。
a=F/m (太字、ベクトル)
第3法則(作用・反作用の法則) 二つの質点 1、2 の間に相互に力が働くとき、質点2から質点1に作用する力
F21と、質点1から質点2に作用する力F12は、大きさが等しく、逆向きで
ある。
F21=−F12 (太字、ベクトル)
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