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技術情報メモ23Technical information

23)設計の勘どころ(真の科学的理解)

 技術情報メモ16〜20で真空技術の活用について述べています。特に、技術情報メモ20では真空装置の漏れ検知と応用について紹介しました。
 真空装置の漏れ検知の方法には加圧法、テスラーコイル法、ガイスラー管法、真空放置法などがあります。中でも、ヘリウムガスを利用した漏れ試験法は精度が高く、広く利用されています。そこで用いられるヘリウムリークディテクタは検出器にヘリウム専用の質量分析器を内蔵したもので質量数4のイオンのみを検出するように調整されています。
 筆者は1992年にヘリウムリークディテクターに出会い、検査装置への応用開発など、多くの経験を積み重ねることができました。ヘリウムリークディテクタは検査対象から漏れ出すヘリウムガスを検出することにより良否を判定する装置です。従いまして、検査対象に確実にヘリウムガスを封入しておく必要があります。封入が不完全だと不良品であってもヘリウムガスが漏れ出さないため良品と判定する可能性があります。このため、真空装置の漏れ検知では漏れ検査方法の精度を高めると共にヘリウムガスの封入技術を高める必要があるのです。
 ここでは20年前に行ったヘリウムガスの封入実験を基に、設計の勘どころ(真の科学的理解)をまとめてみました。ヘリウムガスは高価なため必要以上の使用は避けなければなりません。また、効率的に封入できなければヘリウムリークディテクタの設置環境のヘリウムガス濃度が高くなり、誤検知が多発します。それ故、ヘリウムガスの封入技術の確立は重要になります。
 当時はパソコンも今のように普及しておらず、グラフは手書きになっていますが、真の科学的理解のため何をどのようにしたのかを振り返り紹介します。うまくいった現象が偶然か否かを検証すること無く、検討を終了したのでは真の科学的理解は得られません。これから説明する封入方法についても細かなことには触れずに「吹き込み圧力を高く、吹き込み時間を長く設定すれば安心できるではないか」との考え方もあるかもしれません。しかし、そのような考え方は真の科学的理解の追求とは全く次元の異なる考え方なのです。

 ここで紹介するヘリウムガスの封入実験は真の科学的理解を追求した一例です。
 当時、一般にガス封入方法でよく用いられるものとして次のようなものがありました。
  1)真空室内で脱気及びガス吹込み後、シールする方法
  2)ガス雰囲気中を容器開放状態で通過させる間に自然封入、シールする方法
  3)ノズルにより容器内にガスを吹き込んだ後、シールする方法
  4)一本のノズルで脱気した後、他の一本でガスを吹き込みシールする方法
 ここでは4)に関する実験結果を紹介します。実験の目的は制御変数(ヘリウムガス吹き込み量)と操作変数(吹き込み圧力or吹き込み時間)を把握してヘリウムガス濃度を制御することでした。そこで操作変数の内、吹き込み時間を固定し、吹き込み圧力を操作することにより、ヘリウムガスの吹き込み圧力と吹き込み量の関係を調べました。
 当然のことですが、計画的に実験し、データを解析することが基本になります。得られたデータが既知の法則等に合致すれば問題は少ないのですが、そうでない場合は慎重にデータを解析しなければなりません。統計処理を行う場合も油断すればとんでもない結論を導き出す可能性があるので、注意が必要です。
 ここでは水中捕集して得られたヘリウムガスの吹き込み量のグラフと流体力学の式を用い計算して得られたグラフを比較することにしました。図1が比較のグラフを示したものです。
 このグラフを用いて設定した条件でヘリウムガスを封入した対象物について別途ヘリウムガス漏れ検知試験を行いました。その結果、ヘリウムガス漏れ検知に異常は認めませんでした。
 これらの結果より、今回用いた図2の計算式はヘリウムガスの配管系及びノズル設計の目安として使用できるものである(真の科学的理解に到達)と判断しました。なお、実験装置及びデータの詳細は省略しています。

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。  (2013.7.8)

図1.ヘリウムガスの吹き込み量と吹き込み圧力の関係
@及びAの計算値のグラフは図2の計算式を用いて計算した図3の結果を基に作成したものです。
なお、単位系は非SI単位です。


図2.ヘリウムガスの流量計算に用いた計算式


図3.ヘリウムガスの流量計算の結果
具体的な数値は省略しています。

                                          

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